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S社の資金繰りが極めて厳しい状態に追い込まれたのは、ガソリン事業への深入りと不動産投資の失敗および、スーパーや同業他社との安売り競争が原因だった。
S社は「S」の店舗の約40%にガソリンスタンドを併設した店舗を展開し、ガソリン販売では全米一だったという。 ロードサイドで駐車場を構える「S」にガソリンスタンドを併設した店舗は、買い物と給油を同じ場所で済ますことが出来て利便性が格段に高まると考えたからだ。
ガソリンスタンド併設型はビジネスモデルとして成り立っていたが、ガソリン販売の利幅は薄かった。 石油精製から販売までを一貫したガソリン流通体制にするために、S社は83年にオキシデンタル・ペトロリアム傘下のCITGO(シティゴ)石油精製所を買収し石油精製事業に進出した。
ところが、86年始めに原油価格が急落。 1バーレル2ドル台半ばだった価格は10ドルを下回る水準となった。
原油在庫とガソリン在庫の評価損が膨らみ、S社は86年にCITGOの株式の半分をベネズエラ国営石油会社に譲渡(90年には残りも売却)することを余儀なくされた。 資金繰りの悪化に追い打ちを掛けたのが、不動産事業のつまずきだった。

S社は82年、本社のあるテキサス州ダラスの中心部に一大ビジネス地区を整備する計画を打ち出し、66万平方メートル(東京ドームの14個分)の土地を取得した。 開発計画では42階建て高層ビル2棟、中層ビル6棟を予定。
計画に先行する形で中核部分にはS社の新本社ビル(43階建て)の建設を進めていた。 ところが石油の街でもあるダラスは86年の原油大暴落で操業を停止する油田が相次ぎ、石油産業そのものが冬の時期を迎えた。
石油関連企業の相次ぐ撤退で、オフィスの空室率も上昇し不動産価格も急落した。 Sの壮大な開発計画は頓挫した。
悪いことはさらに続いた。 86年1月28日にスペースシャトル「チャレンジャー」が打ち上げ直後に爆発。
この大事故によりNASA(米航空宇宙局)ではスペースシャトル計画が全面的に凍結、航空・宇宙産業を多く抱えるテキサス州経済全体の停滞を招いた。 S社の積極策はことごとく裏目に出た。
当時、日本と同じようにアメリカでも小売業は経済・産業界の中で中心的な産業とは見られていなかった。 特に南部のテキサス州はその意識が強く、S社は本業のコンビニエンスストア事業だけでなく幅広い事業を手がけることで産業界での地位を高めようとしたが、残念ながらその思惑通りには進まなかった。
弱り目にたたり目とはまさにこのことだった。

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